本書は「社会的手抜き」という現象について書かれた本である。集団行動をするとサボる人が出てくる、ということが、「社会的手抜き」と名付けられ、また60年以上にもわたって研究の歴史があるとは全く知らなかった。そのため、とても新鮮に本書を読めた。ただ本書では、どのような属性をもった個人が社会的手抜きを行いがちなのかとか、どのような課題で社会的手抜きが発生しやすいかなど、「社会的手抜き」とは、という解説で大部分が占められていた。ではどのようにすれば社会的手抜きを組織で防ぐか、という部分は後半に一章だけ割かれているだけで、その部分に関しては物足りなさを感じた。この辺り本書が、「社会的手抜き」という現象の学問について解説した本、という位置付けゆえなのだろう。
あまり紙面は割かれていなかったが、社会的手抜きを減らしていくための方策として、以下のようなことに言及していた。
- 罰を与える
- 社会的手抜きをしない人物を選考する
- リーダーシップにより集団や仕事に対する魅力の向上を図る
- パフォーマンスのフィードバックを行う
- 集団の目標を明示する
- 個人のパフォーマンスの評価可能性を高める
- 腐ったリンゴを排除し、他者の存在を意識させる
- 社会的手抜きという現象の知識を与える
- 手抜きする人物の役割に気づく
(本書のp213-p238から抜粋)
これらの提言について、やり方によっては逆効果なものもあるのではないかなど、様々な考察が行われているので、興味のある方は是非本書を読んで欲しいと思う。
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